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「歴史とはどんなものなのか、誰も手でさわってみた人はない。薄い皮膜のようなものが何十億枚とかさなってゆく。その一枚々々は人間のいとなみであり、「事実」でもある。それがある層を形づくったとき、ひとつの時代、ひとつの歴史となってゆくのではないだろうか。その層の間には無数の忘れられた人生があり、事件がある。」

 澤地久枝『滄海(うみ)よ眠れ―ミッドウェー海戦の生と死』

 終わりの見えないウクライナ侵攻とその後の混迷が続く昨今、常に戦いの犠牲となるのは、日常を生きる市井の人々であることを思い知ることになりました。かつて太平洋戦争の分岐点となった、ミッドウェー海戦による戦死者の足跡を辿り直した作家の澤地久枝氏が残した言葉は、見過ごされてきた戦争・戦後体験に目を向けてゆくべき必要性を、今まさに私たちにも語りかけるかのように胸に迫ります。アジア・太平洋戦争の終結から70数年が経つ現在、日常から戦争体験者がいなくなってゆく中で、いかにその体験や記憶を継承出来るのかについて、「ポスト体験時代」を生きる私たち一人ひとりに問われていることを意識する必要があるのではないでしょうか。

 そこで本プロジェクトでは、長崎、沖縄、福島、水俣など各地において日々平和活動に尽力されている現場の人々との交流活動を通じて、特に次世代を担う学生たちの主体性に期待しながら、戦争・戦後体験の意味を問い、未来への展望を描いていくために、国境を越えた対話(グローバル・ダイアログ)と連帯への可能性を生活の次元から模索することを目指していきます。